願い

2010年9月28日 (火)

願い 第7話

時間にするとどれくらい歩いただろうか。距離にするとどれくらい歩いただろうか。最初からどちらも計測する気が無かったので詳しい事は分からない。ただバスを降りてから、予想以上の距離を歩いた事は確かだった。目の前には大きな鳥居。通常神社にある鳥居は朱色がほとんどなんだけど、ここ天木神社の鳥居は黒かった。TVで見た事があるので知ってはいたが、こうやって目の前にすると、その異様さが倍増されて伝わってくる。黒い鳥居は何とも言い難い独特の景色を生み出していた。そういえばなぜ鳥居が黒いのかTVの特集でやっていたことを思い出した。ここの神社に祭られている神様の名前は影鬼。その昔この辺りで暴れまわっていた天木と言う名の一匹の鬼がいたらしい。傍若無人、冷酷非道に人を襲う天木に嫌気をさした物がいた。それが天木の影。やがて影は天木から離れ実態を持ち、人々を苦しめていた自分の主人でもある天木を討ち倒す。人々はその影に感謝し、その影を神としてこの地に祭る事にした。それがここ天木神社の始まりだった。祭られている影には元々鬼の影だった事から影鬼と名付けられた。その影鬼に敬意を表し、神社としては異例である黒い鳥居が建立されたのである。疑う事しか知らない吉本は、悪趣味な連中が悪趣味な物を作っただけで、そんな言い伝えは後から誰かが作った話なのだろう程度にしか思っていない。だいたい鬼なんてもの自体存在していたわけないし、その影が実体化するなんて・・・・そんな漫画みたいな話、信じる方がおかしい。言い伝えなんて戒めや教訓のために作られた物がほとんどだと知っていた。

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2010年9月12日 (日)

願い 第6話

バスが天木神社近くの停留所で止まった。バスに乗っていた乗客のほとんどがこの停留所で降りた。ここから天木神社までどうやって行けばいいのか?大切な事を調べ忘れていた。でも案ずる事はない。たぶん、バスから一緒に降りた人たちに付いて行けば着くだろう。一人赤い帽子を被った派手な女性が歩いている。この派手な女性を見失わないように吉本は人波に逆らわず歩き始めた。行く人もいれば帰る人もいる。停留所から天木神社へと続く道は沢山の人が行き交っていた。TV番組の効果は大きい。それにしてもこの人の数。裏を返せば、生きる事に悩んでいる人がそれだけいるという事なのだ。あれ?赤い帽子を被った派手な女性を見失ってしまった。吉本は歩きながら辺りをキョロキョロと見渡した。あ、赤い帽子を発見。吉本の予想を超えて随分と前を歩いている。意外にも歩く速度は速いらしい。吉本はそれがなんだかおかしかった。少しだけこの赤い帽子の女性に興味を抱いた。今度は見失わないように・・・・吉本は更に注意深く赤い帽子の女性というか赤い帽子から目を離さずに歩いた。

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2010年8月20日 (金)

願い 第5話

2年前、7年勤めた会社からクビを言い渡された。あまりにも突然の事だったので暫く何も出来なかった。ようやく現実を受け入れる事が出来た時、吉本は再就職先を探した。しかしこの不景気な世の中、再就職先なんて簡単には見つからなかった。努力はした。家族を養っていかなきゃならなかったからだ。吉本は本人なりに一生懸命探してたつもりなんだけど、その努力が家族に伝わる事はなかった。クビを宣告されてから一年後。いつまでも仕事の見つからない夫を妻は見切り、4歳になる娘を連れて家を出て行った。家の中に残されていたのは、テーブルの上に置かれた離婚届だった。その後、吉本は何とか再就職先を見つける事が出来た。前に務めていた会社とは全く違う仕事だった。この歳になって新しい事に挑戦するのは、けして簡単な事じゃない。だけど異業種の仕事はなんだか新鮮で楽しかった。妻と娘は元気に生活しているらしい。風の便りで耳にした。元気でいるなら何よりだ。もちろん会いたいという気持ちはある。やり直したいという気持ちもある。だけど吉本には、それを言い出す勇気がなかった。

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2010年6月27日 (日)

願い 第4話

――― 3ヶ月前 ―――
その日、吉本は長野の山中でバスに揺られていた。本当は昔からの友人と一緒に来るはずだったのだが、直前になって友人は来れなくなった。その時点で旅行を止めれば良かったんだけど、たまには一人旅もいいかもな~と思い、一人知らない土地で悪戦苦闘しながら旅を続けていた。初めて来た場所なんだけど、なんだか初めて来た気がしない。山の中なんてどこも似た様な景色。そんな景色がそう思わせるのだろう。吉本が今向かっているのは天木神社という神社だった。天木と書いて『あまぎ』と読む。ここはTVで特集番組を放映するくらい祈願成就で有名な神社。でも成就した人がTV番組に出演する事は一度もなかった。それだけに、なんだかとてもうさんくさくて信じる事が出来なかった。せっかくこっち方面へ来た事だし、自分で確かめてやろう。そう思って、吉本は今回の一人旅でこの神社に立ち寄る事を決めた。バスの中は混雑していた。どうやらほとんどの人が吉本と同じ目的地を目指している様だった。ただ明らかに理由は違うという事が見てとれる。冷やかしで目的地に向かっている吉本と違って、その眼差しは真剣そのものだった。みんな生きる事に必死なんだな。吉本は心のどこかでこの人たちを笑っていた。自分が今置かれている状況も省みずに。生きる事に必死にならなきゃいけないのは吉本の方だった。

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2010年5月21日 (金)

願い 第3話

今自分は何をしなきゃいけないのか・・・・そして何が出来るのか・・・・・この状況を乗り切る最善の手段を必死になって考えた。視線を黒尽くめの男から、その後ろにある鉄製の扉に移した時、吉本はもう一つの不安要素に気付いた。ドアの鍵が掛けられている。こいつ、俺が逃げられない様に鍵を掛けたのか?用意周到な行動が吉本に危険信号の警鐘を鳴らす。ん?いや待てよ。何か変だ。何かおかしい。吉本はけして遠くない最近の記憶を紐解いてみた。間違いない。間違いなく帰って来た時に俺は自分で鍵を掛けた。この答えに辿り着いた時、吉本は更に不安を募らせ、また一歩二歩後ずさりした。こいつ・・・・鍵の掛かっているドアからどうやって家の中に入ったんだ?そんな事あり得ないだろう・・・・絶対にあり得ない。どうやら黒尽くめの男は本当に何の前触れもなく突然吉本の前に現れたようだ。
『3ヶ月前・・・・3ヶ月前を思い出してください』
3ヶ月前?黒尽くめの男が現れてから、吉本は記憶を遡る事しかしていない。得たいの知れない奴の言いなりになるのはちょっと危険な気もしたが、吉本は言われた通り3ヶ月前に自分が何をしていたのか記憶を蘇らせた。

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2010年4月 9日 (金)

願い 第2話

前回を忘れた人はカテゴリー『願い』をクリックし、前回を読んでから続きを読んで下さい。

『人違いじゃないですか?』
黒尽くめの男は口元を緩ませてニヤリと薄気味悪い笑みを浮かべ、スーツの内側に手を入れた。何が出てくる?ヨシモトは一歩二歩と後ずさりした。スーツの内側から出てきたのはA4サイズの紙切れだった。それも1枚ではなく、数枚をホッチキスの針で止めている感じに見えた。紙は何枚あるのか?ヨシモトの立っている場所からそれを確認するのは難しい事だった。黒尽くめの男は紙を1枚めくった。
『名前は吉本馨。年齢は31歳。間違いないですよね?』
黒尽くめの男は紙に書かれた情報を読み上げているようだった。こいつ何者だ?もしかして誰かに依頼されて俺の事を調べてる探偵なのか?猜疑心と不安は募る一方だった。怪しい・・・・怪しすぎる・・・・・。誰か助けを呼んだ方がいいのでは?そんな事が頭を過ぎった。でも今の状況を考えると、とてもそんな事出来そうも無い。大声で叫ぼうか?そんな事したら黒尽くめの男は逆上して襲い掛かって来るのでは?募った不安は吉本をマイナス思考へと導いて行き、次第に現状が把握出来なくなってパニックを起こしそうになる。こんな時こそ冷静さを欠いちゃいけない。パニックを起こしそうな自分を、もう1人冷静な自分が落ち着け落ち着けと必死になだめる。

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2010年2月19日 (金)

願い

あ、えっと思いつくまま適当に書いてるだけなので期待しないで下さい。何も決めてないので途中でつじつまが合わなくなっても気にしないで下さい(笑)。気楽に読んでもらえると幸いです。続きを書く時間が必要なので、かなりせこく小出しします。御了承下さい。

『やぁ久し振り』
玄関の方から男の声がする。ヨシモトは警戒しながらも声のする方へと向かった。その男は何の前触れもなく突然ヨシモトの前に現れた。
『元気そうだね』
全身黒尽くめのスーツにネクタイを締め、頭には黒い帽子。見るからに怪しい格好だった。久し振り?この黒尽くめの男は確かにそう言った。という事は、前に一度会った事があるという事か。ヨシモトは短い時間の中で記憶を遡ってみた。だが残念ながらヨシモトの記憶の中に、今目の前にいる黒尽くめの男の顔は存在しなかった。時間が短いから合致しなかったのかもしれない・・・・そう思ったヨシモトはもう一度だけ記憶を遡る事にした。今度はさっきよりも丁寧に丁寧に記憶の箱を1つ1つ開けていった。それでもやはり、どの箱を開けてもこの黒尽くめの男の顔は出てこない。知らない人と話す時は緊張するものだ。まして明らかに怪しいいでたち。ヨシモトは意を決して言葉を発した。

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