願い 第7話
時間にするとどれくらい歩いただろうか。距離にするとどれくらい歩いただろうか。最初からどちらも計測する気が無かったので詳しい事は分からない。ただバスを降りてから、予想以上の距離を歩いた事は確かだった。目の前には大きな鳥居。通常神社にある鳥居は朱色がほとんどなんだけど、ここ天木神社の鳥居は黒かった。TVで見た事があるので知ってはいたが、こうやって目の前にすると、その異様さが倍増されて伝わってくる。黒い鳥居は何とも言い難い独特の景色を生み出していた。そういえばなぜ鳥居が黒いのかTVの特集でやっていたことを思い出した。ここの神社に祭られている神様の名前は影鬼。その昔この辺りで暴れまわっていた天木と言う名の一匹の鬼がいたらしい。傍若無人、冷酷非道に人を襲う天木に嫌気をさした物がいた。それが天木の影。やがて影は天木から離れ実態を持ち、人々を苦しめていた自分の主人でもある天木を討ち倒す。人々はその影に感謝し、その影を神としてこの地に祭る事にした。それがここ天木神社の始まりだった。祭られている影には元々鬼の影だった事から影鬼と名付けられた。その影鬼に敬意を表し、神社としては異例である黒い鳥居が建立されたのである。疑う事しか知らない吉本は、悪趣味な連中が悪趣味な物を作っただけで、そんな言い伝えは後から誰かが作った話なのだろう程度にしか思っていない。だいたい鬼なんてもの自体存在していたわけないし、その影が実体化するなんて・・・・そんな漫画みたいな話、信じる方がおかしい。言い伝えなんて戒めや教訓のために作られた物がほとんどだと知っていた。
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